【高槻第3ゼミ】日本語難しすぎ問題 2024年6月8日
高槻第3ゼミナールの播磨です。 前回(https://www.dr-t-eam.jp/blog/30699/)に引き続き、言語のお話をしようと思います。 ドイツ語、古英語ときて次は我らが日本語の難しさ。 現代の英語がいかに楽かを、その難しさと比較してみてみましょう。 中1で習う助動詞 can 能力:「~することができる」 可能性:「~がありえる」 許可:「~してもよい」 依頼:「~してくれますか?」 など 助動詞canにはこれだけの意味が含まれており、文脈や用法によってその意味を変えます。 多くの場合は能力としての可能「~することができる」で訳し、その後に文脈によって(頭の中で)読み方を変えるなどしますよね。 一方で日本語における、canに相当するものを考えましょう。 日本語におけるcanは「れる」「られる」です。 活用の種類 れる られる 未然 れ られ 連用 れ られ 終 れる られる 連体 れる られる 仮定 れれ られれ 命令 れろ、れよ られよ ↓読みたい人はどうぞ↓ まず、助動詞の品詞は付属語の活用する場合です。 付属語というのは、付属語単体で文章として成り立たないもので、自立語に付属することで意味をなすものです。 そして活用する場合は助動詞、しない場合は助詞となります。 活用とは、簡単に言えば言葉が繋がる際に、形が変わることを指します。 この時点でもう大変そうですね。 ですが、英語のcanで詰む人の多くは、canの中に多くの意味がありすぎてどうやって訳せばいいのかわからないと言います。 その点、日本語はいいですね。「れる」「られる」は「できる」なのですか……ら…… 受け身・尊敬・自発・可能「はい……」 はい……。 日本語も英語と一緒で、同じ「れる」「られる」でも文脈によって内容が異なります。 試しに以下の文章を見てみましょう ・先生に褒められる ・校長先生が来られる ・嫌な記憶が思い出される ・速く走れる 皆さんは無意識に使い分けができる(そりゃ少なくとも10年とあまりは生きているのですから、使い分けられない方が珍しい)ので、ぱっと見で「あーはいはい」となったと思います じゃあ先生、内容に種類があるのはわかったけど、英語の方が簡単な理由ってなんですのん、という声が聞こえてきました。 英語のcanが持つ、能力・可能性・許可・依頼は一貫しているのです。 どういうこと?見てみましょう。 can ↓ 「~する可能性がある」:可能性・推量 ↓ 「(~する可能性があるほどの)能力(がある)」:能力 ↓ 「(~する可能性があるほどの能力を持っているのなら、いいですよ、という)許可」:許可 ↓ 「(~する可能性があるほどの能力を持っているのなら、してほしい、という)依頼」:依頼 いずれにしても「可能性」が意味的に含まれており、意味に一貫性がありつつも、文脈によって意味を読み替えることができますね。 Can you give us an example? 訳:例を示してくださいませんか?(依頼) 直訳:例を私たちに与えてくださるほどの能力をお持ちですか?(なら、与えてください) You can leave it on my house. 訳:私の家に置いていってもいいよ(許可) 直訳:あなたは私の家にそれを置く可能性があります(可能性があるので、してもよい)(あるいは、単に置くことができる=おいてもよい) canを見たら「できる」と訳すと簡単ですが、その場合「可能性」が抜け落ちてしまうので、お薦めは可能性を意識することです。 一方そのころ日本語は…… 受け身と自発で対(つい)だし、尊敬と可能はそもそも関係なさそうなうえに、それぞれの意味が違いすぎ ねぇ……。 そう思ったらさ、英語を習得するなんてのはさ、簡単じゃないですか……? ということで、母国語の日本語でさえ難しく、ふたを開けてみれば現代の英語は案外簡単であるというお話しでした。 次回更新は6月14日(金)、歴史の楽しさを知ってほしいので、哲学者ソクラテスの面白いエピソードでも書こうかと思います。 高槻第3ゼミナール 播磨