『ティーチングの下地があってこそコーチングが生きる!』
◇教育の世界に、コーチングのスキルが入ってどのくらいになるでしょうか。
私は、今から40年前に、アドラー心理学系の親子のコミュニケーションスキルを学んで、
生徒とコミュニケーションを取っていました。
また、保護者面談の時は、その子育て理論を保護者の方々にアドバイスをし、
保護者との信頼関係を結んでいました。
◇私が塾に勤め出した1980年代の中ごろには、おそらくコーチングスキルは、
子育ての分野で、そして、スポーツの分野で、そして最後に、教育の分野で入っていたように思います。
そして、私が教育コンサルタントとして独立して、
皆さんにコーチングマインドとコーチングスキルを紹介し出したのは、
2001年の7月のセミナーからです。ですから、随分と長い間、
私もコーチング的なものに触れてきたわけです。
◇この間、ビジネス界では、コーチ21やCTIのコーチングが、
学習塾界では、日青協の教育コーチングが随分と普及してきました。
コーチングマインドが、どんどんと広がっていくことはいいことですが、
コーチングで全てを解決することはできません。
コーチングは、万能ではないのです。
今回は、そのあたりのことを簡単に書いてみます。
◇コーチングは、最終的には潜在能力を引き出すスキルですが、
それは、そんなに簡単に出来ることではありません。
相手の潜在意識にアクセスする質問は、実はそんなに簡単にはできないのです。
ですから、コーチングに精通していない先生方は、
試行錯誤をしながら、自分なりのコーチング観をしっかり持つことが大切なのです。
そして、コーチングの最終目標が「潜在意識へのアプローチ」にあるとすれば、
そこまでの段階を一歩ずつ踏む必要があるということです。
ですから、焦らずに進んでいくようにすることです。
◇そして、次に考えることは、コーチングが有効な対象とは
どういう生徒なのかということです。
コーチングは、相手が全く白紙の状態であるならば、
つまり、全く知識がない状態ならば、手も足も出ないスキルだということを理解しておくことです。
つまり、相手の中に知識があってこそのスキルなのです。
相手の中にある知識をどう使って、どういう目標を達成したいかを、コーチングスキルを使って明確にし、
相手がその明確になったことをきっかけに動き出すということが、コーチングの効果なのです。
◇ですから、そのために何かを達成できるスキルをある程度獲得していることが、前提になっているスキルなのです。
何かのスキルが全くない人間をコーチングしても実効性はあまりないのです。
それよりは、ティーチングをして、スキルを与え、
そのプロセスの中でコーチング的なスキルを使って、
ティーチングがスムーズに行なわれるようにしなければならないのです。
ここにティーチングの重要性が出てきます。
◇ですから、学習塾の場合は、コーチングスキルの獲得以前に、
ティーチングスキルの獲得が、重要なのです。
ここを間違うと、とんでもないことになります。
生徒を指導することが出来なくなる可能性があるからです。
◇ティーチングには、ある種の強制力が伴いますが、
コーチングには、その強制力が前提にはないのです。
生徒を指導する発想が薄いのです。
生徒にやる気を起こさせるためには、スキルの伝授が必要なはずですから、
この辺を誤解して、コーチングにすべてを任せてしまってはいけないのです。
コーチングが、有効に機能するためには、ティーチングが必要だということです。
◇まずは、ティーチングスキルでしっかり生徒を指導し、生徒に武器を与えること。
そして、生徒に目標設定をしてもらう時や学習計画を立ててもらう時に、
コーチングスキルを活用して、自主的に生徒が何かを決めたという状況を成立させること。
次に、その目標や計画遂行のために、コーチングスキルを活用して、
生徒の潜在能力を引き出し、意欲を引き出して、目標達成をさせる。
そんな流れの中で、コーチングを活用することです。
そうすれば、コーチングの効果は大きなものになるように思います。
そして、その繰り返しが、生徒の自律的態度を育んでいくことになります。
◇そういうステップで、コーチングを使うことです。
コーチングだけでは、学習塾の目的は達成されないと思います。
ティーチングあってのコーチングだと思っておいたほうが良いと思います。
世の中がコーチングだけで良いと騒いでも、その騒動に乗らないことです。
◇学習塾にとってコーチングは、非常に重要なスキルです。
コーチングスキルの前提が共感のコミュニケーションだからです。
学習塾全体にコーチングマインドが広がっていくことは、非常に重要なことです。
そのために、ティーチングを磨いて、コーチングが、効果的になるようにすることなのです。
◇生徒・保護者と信頼関係を築くためにも、
コーチングマインドを持ったコミュニケーションを実践していきたいものです。