塾の合格実績推移グラフに注目!急増しているように見せる手法のカラクリとは?

塾選びにおいて、合格実績は非常に重要なポイントの一つです。多くの塾は、過去数年の合格者数の推移を示すためにグラフを使っていますが、これらのグラフには少し注意が必要です。なぜなら、グラフを工夫することで、実際にはそれほど変化していない数字を、あたかも大きく成長しているかのように見せる手法があるからです。今回は、この「急増しているように見せる手法」の仕組みについて、具体的に解説していきます。

合格実績推移グラフの仕組みとは?

合格実績を示すグラフは、多くの塾が保護者に対して説得力を持たせるための重要なツールです。しかし、その見せ方に少し工夫がされていることがあります。

縦軸のスケールを工夫する手法

一つ目の手法は、グラフの縦軸(Y軸)を工夫することです。通常、グラフの縦軸は0から始まるのが一般的ですが、これを途中の数字から始めることで、わずかな合格者数の増加でも大きく増えたように見せることができます。

たとえば、ある塾の合格者数が、100人、105人、110人と増えた場合、0から始まるグラフではほとんど変化がないように見えるかもしれません。しかし、縦軸を100から始めることで、105人と110人の差が大きく見え、あたかも急激に成績が向上しているように見えるのです。

このようなグラフは、実際の成長が緩やかであっても、保護者に対して「この塾は毎年大きく成長している」という印象を与えることができます。

上記のグラフは、塾の合格者数の推移を示す例です。以下の点に注目してください。

注意するポイント
  1. 左側のグラフは、縦軸が0から始まっています。合格者数の増加は緩やかに見えます。
  2. 右側のグラフでは、縦軸が100から始まっており、同じデータでも急激に増加しているように見せています。この手法によって、実際にはわずかな増加しかない場合でも、大きな変化があるように見えることがあります。

これが、塾の合格実績グラフで使われる「増えているように見せる手法」の一例です。

データの範囲を広げる手法

もうひとつの手法を紹介します。これは、合格者数の集計範囲を変えることで、実績を大きく見せる方法です。例えば、以前は特定の学校だけの合格者数を表示していた塾が、途中から他の学校を含めた合格者数も加えて集計することで、合格者数が増えたように見せる手法です。

たとえば、ある塾がこれまで特定の学校を「難関校」という括りで合算の合格者数を発表していたとします。しかし、あるタイミングで「難関校」の基準を変更し、他の学校も追加することで、数字上では難関校の合格者数が急増しているように見せることができます。この場合、実際には塾の教育内容や指導力が急成長したとは言い切れず、単に表示するデータの範囲を広げただけという可能性もあります。

注意するポイント
  • 合格実績の集計範囲が変わっていないかを確認する。
  • グループ分けされている場合はどの学校の合格者数を集計しているかをチェックする。
  • 過去の集計方法との違いがないかを見比べる。

増えているように見せる手法の問題点と対策

グラフを見せ方一つで変える手法には、保護者が塾選びを誤るリスクもあります。ここでは、このような手法の問題点と、正しく見分けるためのポイントを紹介します。

問題点:誤解を招きやすいグラフ表示

合格実績グラフが誇張されている場合、保護者はその塾が「他の塾よりも優れている」「毎年劇的に合格者数を増やしている」と勘違いしてしまう可能性があります。実際にはわずかな増加であっても、グラフの工夫で大きな成長を演出できるため、正確な情報を得ることが難しくなります。このような誇張されたデータに基づいて塾を選ぶと、期待外れになることも考えられます。

対策:グラフを見る際に気をつけるポイント

グラフを見る際に注意すべきポイントを理解しておくことで、誤解を避けることができます。

注意するポイント
  • 縦軸のスケール
    縦軸が0から始まっているかを確認しましょう。0から始まっていない場合は、わずかな増加でも大きく見せられている可能性があります。
  • 期間の長さ
    数年分のデータが表示されているかを確認します。短期間での急激な増加を強調している場合、そのデータが塾全体の成績を正確に反映しているとは限りません。
  • 他の塾との比較
    一つの塾だけでなく、他の塾のデータと比較してみることで、より客観的な判断ができます。

グラフ以外で注目したい合格実績の指標

塾が公開する合格実績グラフ以外にも、塾選びで気をつけるべき指標はいくつかあります。以下に、特に注意すべき指標をいくつか紹介します。

合格者の「母数」

合格者数を示すデータでは、塾全体の生徒数、つまり「母数」を確認することが重要です。例えば、100人中80人が合格した塾と、500人中200人が合格した塾では、合格者数だけで見れば200人が優れているように思えますが、合格率で見ると前者の方が高いです。

塾が公表している合格者数が増加していても、生徒数自体も増えているかもしれません。母数が増えただけで合格者が増えている場合、実際の合格率は変わっていないことがあるため、合格率もチェックしましょう。

合格率の算出方法

合格者数が多く見えても、合格率が不透明な場合があります。たとえば、塾が「合格者数100人」としていても、その100人が何人中の100人なのかが明示されていないと、その数字は意味を持ちません。

合格率を公表している場合、分母となる生徒数が明確かどうかを確認することが大切です。分母が曖昧だったり、途中で転塾した生徒を除外して計算されている場合、実際の合格率が誤解される可能性があります。

「特定校舎」か「全校舎」か

複数校舎を運営している塾は、校舎ごとに指導の質や合格実績が異なることがあります。塾全体の合格実績として数字を公表していても、特定の校舎の実績が非常に優れているだけかもしれません。

通う予定の校舎の合格実績が他の校舎と比較してどうなのかを確認することが重要です。全体の数字に惑わされず、校舎ごとの実績にも注目しましょう。


塾選びにおいて、合格実績グラフは非常に参考になる情報の一つです。しかし、グラフの見せ方によって、実際よりも大きく成長しているように見せる手法があることを知っておくことが大切です。縦軸のスケールや期間に注意し、他の塾とも比較することで、より正確な情報を得ることができます。塾選びでは、グラフに惑わされず、実際の指導力や子どもの成長に目を向けることが大切です。