講師ブログ:【SDGS】環境問題を考えよう!~レジ袋の有料化・海洋プラスチック編~
2020年7月1日、レジ袋の有料化がスタートしました。これは法的な強制力を携えた国策であり、違反すれば50万円以下の罰金もありえます。ところが、多くの人が消費税増税に反対したように、レジ袋有料化にも野次がとんでいます。
レジ袋有料化に反対する人々の意見はこうです。
「レジ袋よりマイバッグの方が燃やした時のCO2排出量が多いじゃないか」「そもそもレジ袋はプラスチックゴミの数%しか占めていない」
たしかに、マイバッグはレジ袋の平均50倍のCO2を排出し、レジ袋はプラスチックゴミ全体の2%程だと言われています。より大きな割合を占めるペットボトルなどの規制から進めるべきだといった意見はもっともなように感じられます。しかし、1度でも砂浜のゴミ拾いのボランティアをした経験がある方なら、レジ袋規制に少しは納得できるかもしれません。
砂浜と聞いて、透き通った海に打たれるサラサラの砂をイメージする方は多いでしょう。しかし、そのような砂浜はむしろ少数で、今やほとんどの海岸はゴミに埋もれてしまっていて、観光地のビーチなどは、ゴミを掃除する地域の方などがいてやっとその美しさを保っているのです。掃除する人がいないこの世のほとんどの海岸は、ゴミだらけであるといってよいでしょう。
ところで、海岸に落ちているゴミはどんなものがあるでしょうか。ワシントンに拠点を置く環境保護団体「オーシャン・コンサーバンシー」によると、2018年のデータは下図の通りです。
1位 たばこの吸殻(572万個)
2位 食品包装(373万個)
3位 かき混ぜ棒やストロー(367万個)
4位 フォーク・ナイフ・スプーン(197万個)
5位 飲料ボトル(175万個)
6位 飲料ボトルのキャップ(139万個)
7位 レジ袋(96万個)
8位 その他のビニール袋(94万個)
9位 栓(73万個)
10位 コップ・皿(66万個)
たばこの吸殻にはプラスチック製のフィルターを使われており、トップ10は全てプラスチック製品になっています。さらにこのデータを見るに、海岸には飲料ボトルやコップ・皿など、比較的丈夫なプラスチックに加えて、レジ袋やビニール袋などの比較的柔らかいプラスチックも散乱しているということがわかります。
ごみ拾いの経験は多くの人にあることだと思われますが、想像してください。砂浜に半ば埋まっているペットボトルと、持ち手のみが顔を出しているレジ袋を見つけたあなたは、恐らくペットボトルを先に拾うことでしょう。硬いペットボトルの方が拾いやすいからです。もしくは、中身にも砂をパンパンに詰まらせたレジ袋を拾おうとするも、ちぎれにちぎれて細かくなっていくだけの袋にイライラして、拾うことを諦めてしまうかもしれません。
プラスチックは時間とともに劣化します。特に紫外線に晒されたプラスチックは脆くなり、ポロポロと崩れて小さくなっていきます。砂浜のレジ袋も同様に、時間経過で脆くなってちぎれやすくなるのです。そうなればもう拾うのは一苦労。袋の外側の砂を掘り返し、中に入り込んだ砂も取り除いてようやく回収ができます。レジ袋とは、普段のその利便性とは真逆に、ゴミになった途端、海の厄介者と化すのです。
このように、ゴミとして世界に流出したときの回収のしやすさを考えてみると、1年間で生まれる96万もの厄介者の規制にも、少しは納得できるかもしれません。
さらにこの規制は、人々にプラスチック問題を投げかけることにもなります。レジ袋規制の有意性に疑問を持ち、自分で調べたり、テレビ等を見てよりプラスチック問題に詳しくなったという人もいるはずです。そういう点で、身近な「レジ袋」をその契機としたのは適切だったのではないでしょうか。